一見価値はなさそうに見えるただの古い物を、鑑定してお宝をさがすという番組がやっていたが、今でもその番組はあるのだろうか。つい先日も何かのバラエティ番組で、同じような内容の海外番組を紹介していて、思わぬ物が超高額になり、鑑定依頼者が大喜びするという場面を見たが、うちに代々伝わるこの金庫にも、そんな幸運がやってこないかと、私は密かに期待していた。
代々伝わると言えば聞こえがいいが、ただ捨てるに捨てられなかったので、今日までこの家に残っているだけだ。きっと昔であれば、金庫を捨てる手間さえ惜しまなければ、簡単に捨てられたのではないだろうか。近年では30センチ以上の金属物は粗大ゴミとみなされるし、さすが金庫だけあり、すごく重い。父から私の代に変わる際、家を改築したのだが、その時も運搬業者さん泣かせの家具だった。そしてこの金庫、父のそのまた父の代から、鍵がない。だから、ずっと開けられることがなく、何かを出すこともしまうこともできない、無用の長物とも言える金庫だった。
しかし今回、初めて鍵の専門業者を呼び、この金庫を開けてもらうことになった。お宝鑑定番組を探すよりも、もっと身近に良い業者がいると、弟が鍵の業者を連れてきてくれたのだ。私もそうだが、弟も小さいときから、この金庫にはどんなお宝が眠っているのだろうと、期待していたらしい。業者に見てもらうと、さぞ古く開けるのには苦労をするであろうと予想していたうちの金庫は、大した道具も時間もかからず、いとも簡単に開いてしまった。業者曰く、古いので鍵のしくみも簡単だったらしく、保存状態が良かったために汚れや錆もなかったので、すぐに開いたということだった。
そして中から出てきたものは、とても大きな金庫の中から、たった1点。古ぼけた扇子1つだった。特に凝った装飾がほどこされたわけでもない扇子は、一目であまり価値がないように思われた。