親が使っている金庫の暗証番号をひそかに知っています。

oya_kinko私の両親は揃って還暦をとっくに過ぎているのだが、普通の夫婦よりも仲がいいと思う。今でも誕生日にはお互いにプレゼントを贈り合っているし、二人仲良く散歩に出かけてはラーメン屋さん巡りをしている。私の子供たちと一緒に回転寿司に行った時なんて、孫の前でも「ほら、あーん」とか言いながら、母が父に寿司を食べさせていて、見ているこっちの方が目のやり場に困ったくらいだ。まあ夫婦円満は何よりであるけれど。

そんな父の車のナンバーは、言わずもがな母の誕生日だ。いい歳をして…と言いたくなるのは羨ましさの裏返しかもしれない。我が家の車のナンバーは、中古車だったということもあって元からついているどうでもいい番号だから。その歳までそんな風に思われる母が、私はやっぱりちょっぴり羨ましいのだ。

だからそんな両親のちょっとした秘密を私が知っていたとしても、大目に見てほしい。ちょっとした秘密とは何かというと…両親の家にある、金庫の暗証番号のことだ。

小さい頃から実家にあった金庫の暗証番号はどんなに頼んでも教えてはもらえなかった。通帳や印鑑など、家の大事なものはすべてそこに入っているから仕方ないものの、私はその金庫の中身よりも、その金庫をルパン三世みたいに開けてみることの方に興味があった。そこで興味を押さえきれなくなった私は、高校生の頃、試しにその金庫を開けてみようとした。といっても番号は知らないのであてずっぽうである。父が設定したんだろうから、きっと母の誕生日に違いない、と回してみたら…何と本当に開いてしまったのである。父らしいというか、だけどこんなに簡単に番号を当てられてしまったら、金庫に入れている意味がないじゃないの…せめて銀行のキャッシュカードだけは違う番号にしておいてほしいものだ。

こんな二人の金庫、防犯的にはどうかと思うけれど、でもそんな両親がやっぱり羨ましいなと思う自分がいるのだった。