この数日間、私は地に自分の足がついているかいないか不安で仕方なかった。もちろん何度確認しても足は地についているのだけど、体が着地していても心がふわふわと浮いているような感覚といった方が正しいだろうか。人生で、こんな経験は初めてである。
私は先日、宝くじに当たってしまった。残念ながら億万長者とまではいかなかったけれど、それに匹敵するくらいの金額だった。新聞で自分の買った宝くじが当たっているとわかったときには、武者震いという表現がぴったりなくらい、宝くじを持つ手がブルブルと震えてしまった。飛び上がって喜ぶという単純な感情はなく、ただただ事の大きさに対する、恐怖に近い感情といったほうが正しいかもしれない。大げさかもしれないけれどFBIやCIAが探し求める情報を、間違って私が手に入れてしまったような――。当たった喜びよりも、これから起こるかもしれないあらゆることを想定し、早くも私はゲンナリしてしまったのである。私みたいな貧乏性な人間は、本当は宝くじを買うべきじゃないのかもしれない。もちろん、だからといって全額寄付するつもりも毛頭ないが。
面倒事はたくさんなので、宝くじが当たったことは誰にも言っていない。これから先も誰にも言うつもりもない。当たったのかと推測されるのも嫌なので、生活も今まで通り、地味にしていくつもりだ。だけど、当選金を銀行に預けるには、今の日本は不安すぎる。だから金庫の購入を考えているところだ。現金が一番だと言った誰かの受け売りだけど、きっと当たる前よりも当たった後の方が人を信じられなくなる気がする。
宝くじで高額当選すると、人生は悪い方にしかいかないと言うけれど、その元凶はこんな風に誰も信じられなくなるところから始まるのかもしれない。